臨時増刊「鶏の研究」第23号
第23号
2017年8月発行
2017年8月発行
生産性向上のための環境要因
〜飼料要求率改善のための各種要因〜
− 概要 −
鶏業界は寡占化が着実に進行しているのが実態であり、業界を取り巻く環境は日々激変している。一方、先行き不透明感が漂う中にあっても増羽意欲は旺盛であり、１％の増羽が５％の価格下落に繋がるといわれ、このような環境の中で生産者が生き残る道は経営効率の改善、すなわち生産性向上に尽きる。そこで本号では、生産性向上のための環境要因について数多くの項目の中から、特に注目したいテーマについて取り上げ解説する。
- 鶏卵の生産性向上に必要な飼養環境要因
− 鶏卵の生産性向上に必要な環境要因として、第一に養鶏場の立地条件、第二に鶏舎方式と飼育密度が挙げられる。さらに、季節毎の気候変動、個々の農場の鶏種選択と適正卵重コントロール、動物福祉に基づく飼育方法等の要因が複雑に絡み合い、飼養環境は出来上がっている。種々のデータを見ながら、鶏へのストレスが少なく、鶏卵の生産性の向上に繋がる環境について考える。 - 2020年を見据えた鶏舎設備の生産性向上 ＩｏＴと環境調和技術
− わが国の採卵養鶏産業は、安心・安全で良質な蛋白質を国民に安定供給し、鶏卵自給率は戦後一貫して9割以上を維持してきた。一方で、さまざまなモノがインターネットに繋がり、新たな価値を創出するＩｏＴ社会が本格的に始まっている。東京オリンピックを機に社会全体が変革を遂げようとしている時、養鶏産業もさらに生産性を向上できないか、鶏舎設備の面から考察する。 - 配合飼料の性能と価格を安定化するための配合割合設計法、鶏糞の量との関係とは
− 配合飼料の成分は種々の原料に由来し、個々の原料の栄養価や価格は変化する。そのため、配合飼料メーカーは生産者が本来の経営に専心できるよう、性能の安定した経済的な配合飼料を作るべく常に特段の注意を払っている。本稿ではその際に重要な配合割合の計算とその意義、飼料の内容と鶏糞の量の関係等について、月刊『鶏の研究』誌の連載の中から再編集した。 - 栄養面から考える採卵鶏の個卵重コントロールについて
− 鶏卵の卵重に影響を及ぼす要因には、鶏種の違い、成鶏舎の構造、季節、栄養等がある。本稿では、鶏の生理的な特徴と飼料中の栄養素との関係性について考察する。とくに採卵鶏用飼料に最も応用されているアミノ酸の卵重への影響について掘り下げて考えてみたい。実際の野外農場の事例も交えながら紹介する。 - 飼養衛生管理基準を５年ぶりに改正
− 農林水産省消費・安全局動物衛生課は、飼養衛生管理基準が平成23年の改正から5年が経過し、その間に発生した家畜の伝染性疾病の状況や飼養変化等を踏まえ、平成29年2月1日付で飼養衛生管理基準の一部を改正した。飼養衛生管理の徹底は、悪性の家畜伝染病の発生・蔓延防止に有効だが、その他にも一般の疾病や慢性疾病の予防、育成率や増体の向上等でも効果が得られる。本稿では、飼養衛生管理基準の「鶏その他家禽（アヒル・ウズラ・キジ・ダチョウ・ホロホロ鳥・七面鳥）編」の概要を、新たに盛り込まれた「家畜の死体や排泄物の適切な取扱い」（全畜種共通）と共に紹介する。 - 飼養衛生管理基準準チェックリスト
（鶏、アヒル、ウズラ、キジ、ダチョウ、ホロホロ鳥および七面鳥の場合）
−家畜の伝染性疾病の発生予防と蔓延防止は、個々の農場における取組みが基本だが、規模の大きさにかかわらず農場が一体となって取り組むことによってさらなる効果が発揮される。このチェックリストは、飼養衛生管理を満たすために必要な項目を飼養衛生管理基準から抜粋したもので、農場内で定期的にチェックを行うために農林水産省消費・安全局動物衛生課が作成したものである。